はじめに|「東京だから空き家は問題ない」は本当か
「東京は人が多いから大丈夫」
不動産の話になると、こうした言葉をよく耳にします。
確かに、東京都は全国の中でも人口が多く、特別区には今も人が集まり続けています。
しかし、その一方で、
- 空き家数は増加
- 世帯数は将来的に減少
- 生産年齢人口も減少
という現実があります。
つまり、
「人が多い」ことと、 「不動産需要が維持され続ける」ことは、
必ずしも同じではありません。
本記事では、東京都や特別区の空き家統計、人口構造、住宅供給の視点から、
👉 「東京でも空き家は増えるのか」
👉 「不動産価格や住宅需要にどんな影響があるのか」
を整理していきます。
また、前職で競売業務に携わっていた経験も踏まえながら、
👉 「不動産をどう考えるべきか」
についても考察していきます。
不動産価格は「なんとなく」では決まらない
不動産価格は、単純に「人気があるから上がる」というものではありません。
実際には、いくつかの考え方をもとに価格が形成されています。
代表的なのが、以下の3つです。
- 積算価格
- 取引事例比較法
- 収益還元法
積算価格とは何か
まず積算価格とは、不動産の土地と建物をそれぞれ別の方法で評価し、その合計で価格を算出する考え方です。
簡単に言えば、
👉 「今この建物と土地を再度作るとしたら、どれくらいの価値があるか」
をベースに考える方法です。
建物については、年数の経過とともに価値が減少していきます。
例えば、木造戸建ての場合、会計上では22年で価値評価がほぼゼロになるとされています。
一方で、土地には減価償却という概念がありません。
つまり、
👉 建物の価値は下がりやすい
👉 土地の価値が重要になる
という特徴があります。
また、土地価格を考える際には、
- 路線価
- 公示価格
- 固定資産税評価額
などが参考にされます。
さらに、
- 土地の形状
- 接道状況
- 立地条件
によっても価格は変わります。
取引事例比較法とは何か
次に、取引事例比較法です。
これは、
👉 「似た物件が実際にいくらで売れているか」
をもとに価格を考える方法です。
例えば、
- 同じエリア
- 同じ築年数
- 同じ広さ
の物件が、過去にどのくらいの価格で取引されたのかを参考にします。
つまり、市場の“実際の売買価格”を重視する考え方です。
投資用不動産で重要な「収益還元法」
この中でも、投資用不動産で特に重要なのが「収益還元法」です。
これは簡単に言えば、
👉 年間収入 − 運営費 = 正味収益
を算出し、その収益をエリアごとの利回り(キャップレート)で割り戻して価格を考える方法です。
例えば、
- 家賃収入
- 管理費
- 修繕費
- 固定資産税
- 空室リスク
などを踏まえて、「最終的にどれだけ利益が残るか」を見るイメージです。
ここで重要なのが、利回り(キャップレート)は場所によって異なるという点です。
一般的に、
- 都市部 → 利回りは低い
- 地方 → 利回りは高い
傾向があります。
これは、
👉 「都市部の方が安定していると見られている」
ためです。
逆に言えば、
👉 不確実性が高いほど、投資家は高い利回りを求める
ということでもあります。
つまり、不動産価格は最終的に、
👉 「どれだけ収益を生み出せるか」
に強く影響されます。
だからこそ、
- 人口減少
- 空き家増加
- 家賃下落
- 修繕費上昇
といった要素は、長期的な不動産価格にも関係してくるのです。
人口減少と空き家問題
ここで重要になってくるのが、人口減少と空き家の問題です。
不動産は、最終的には「誰かが住む」ことで成り立っています。
当然ですが、人口が減れば、借り手も減っていきます。
借り手が減れば、入居者は多くの物件から選べるようになります。
そうなれば、家賃競争は避けられません。
特に今後は、
- 築年数
- 立地
- 管理状態
によって、「選ばれる物件」と「選ばれない物件」の差がさらに広がる可能性があります。
しかも、問題は家賃だけではありません。
今後は、
- 人件費の上昇
- 修繕費の上昇
- 建築コストの上昇
などによって、維持コストそのものが増えていく可能性があります。
つまり今後は、
👉 家賃は下がりやすい
👉 維持費は上がりやすい
という状況になる可能性があります。
そうなれば、当然ながら収益性は悪化していきます。
ここで、「東京だから大丈夫では?」と思う人もいるかもしれません。
確かに、東京都の人口は約1,430万人と、日本の中では圧倒的に多いです。
しかし、重要なのは“今”だけではありません。
東京都の将来推計を見ると、特別区の中でも、2045年まで人口増加が続くと予想されているのは、以下の5区のみです。
- 千代田区
- 中央区
- 港区
- 文京区
- 渋谷区
それ以外の区については、将来的に人口減少へ転じると予測されています。
つまり、
👉 「特別区だから安心」
とは、一概には言えない状況になりつつあります。
さらに視野を広げると、日本全体では人口減少が続いていきます。
厚生労働省の推計では、2100年には日本の人口は約3,800万人〜6,500万人まで減少するとされています。
また、2050年前後には1億人を下回る見込みです。
もちろん、東京は全国の中では人口が集まりやすい地域です。
ただ、それでも日本全体の人口減少から完全に切り離されるわけではありません。
特に不動産は、
👉 「今どうか」
だけではなく、
👉 「20年後、30年後にどうなり得るか」
まで含めて考える必要があります。
だからこそ、人口減少と空き家問題は、今後の不動産を考える上で避けて通れないテーマだと思っています。
東京都でも空き家は増えている
東京都住宅政策本部の統計によると、2023年時点で東京都の空き家数は約90万戸。
空き家率は10.9%となっています。
空き家率そのものは、1998年以降、大きくは変わっていません。
しかし、その一方で、
👉 空き家“件数”自体は一貫して増加しています。
ここでいう「空き家」とは、
- 賃貸用の空き家
- 売却用の空き家
- 二次的住宅
- 賃貸・売却用・二次的住宅を除く空き家
を合計したものです。
特に増え続けているのが、賃貸用住宅の空き家です。
つまり、「貸したい物件」は増えている一方で、それを借りる人とのバランスが今後どうなるのかという問題があります。
また、特別区の中でも、空き家率は決して低いわけではありません。
例えば、
- 豊島区:13.9%
- 港区:13.7%
- 荒川区:12.9%
となっています。
空き家“件数”で見ると、
- 世田谷区:約5.9万戸
- 大田区:約4.9万戸
- 足立区:約4.4万戸
が多い状況です。
もちろん、この数字は単純な「賃貸空室率」とは異なります。
ただ、それでも、
👉 「東京だから空き家が少ない」
👉 「特別区だから需給が崩れない」
とは、一概には言い切れない現実があります。
これは多摩部でも同様です。
東京都多摩部で見ると、空き家数は、
- 八王子市:約3.4万戸
- 町田市:約2.0万戸
- 府中市:約1.8万戸
と続いています。
また、空き家率で見ると、
- 清瀬市:13.6%
- 国立市:13.5%
- 府中市:13.0%
となっており、こちらも決して低い水準ではありません。
さらに、東京都の将来人口推計では、多摩部のエリアは2045年までにすべて人口減少へ転じると予測されています。
つまり、
👉 「人口が減る」
👉 「住宅需要が減少する可能性がある」
👉 「空き家が増える可能性がある」
という流れは、すでに統計上でも見え始めています。
もちろん、東京は全国の中では依然として人口が集まりやすい地域です。
しかし、それでも、
👉 「東京だから安心」
👉 「特別区だから需給は崩れない」
という前提だけで考えるには、不確実性が大きくなっているように感じます。
そもそも“供給過多”の構造がある
さらに重要なのが、住宅戸数と世帯数の関係です。
東京都の推計では、世帯数は2035年の768万世帯をピークに減少し、2065年には681万世帯まで減るとされています。
一方で、2023年時点の東京都の住宅戸数は約820万戸あります。
つまり、
👉 世帯数より住宅戸数の方が多い
という状態です。
これは構造的に見ると、
👉 「需要より供給が多い」
ということを意味します。
もちろん、実際には、
- 立地
- 築年数
- 管理状態
- エリア特性
によって差があります。
そのため、「東京都全体で余っているから、すべての物件の価値が下がる」という単純な話ではありません。
ただ、長期で見ると、
- 人口減少
- 世帯数減少
- 空き家増加
という流れの中で、
👉 「選ばれる物件」
👉 「選ばれない物件」
の差は、今後さらに広がっていく可能性があります。
そして、需要と供給のバランスが崩れれば、当然ながら競争は激しくなります。
借り手が少なくなれば、
- 家賃を下げる
- 初期費用を下げる
- 設備を更新する
など、オーナー側の負担も増えていきます。
その一方で、
- 修繕費
- 人件費
- 建築コスト
などは、今後も上昇する可能性があります。
つまり、
👉 「収益を増やしにくい」
👉 「コストは上がりやすい」
という状況になる可能性があります。
その上で不動産投資を行うのであれば、
- 空室リスク
- 修繕リスク
- 金利上昇リスク
- 災害リスク
- 人口減少リスク
など、さまざまなリスクを想定しておく必要があります。
不動産は金額が大きいからこそ、
👉 「今うまく回っているか」
だけではなく、
👉 「想定が外れた時に耐えられるか」
まで含めて考えることが重要なのだと思います。
相続による“売却圧力”もある
さらに、日本特有の問題として「相続」があります。
日本では、相続税は原則として現金で一括納付する必要があります。
つまり、不動産を相続しても、納税資金が不足していれば、物件を売却せざるを得ないケースがあります。
特に今後は、高齢化の進行によって、相続物件そのものが増えていく可能性があります。
これは、不動産市場における“供給増加”の要因の一つです。
しかも、この現象は地方だけの話ではありません。
東京都や特別区でも、当然起こり得ます。
つまり今後は、
👉 相続による売却物件
👉 相続後に維持できなくなった物件
などが市場に増えていく可能性があります。
団塊世代・団塊ジュニア世代の影響
ここで重要になるのが、東京都の人口構造です。
東京都の人口構造を見ると、特徴的なのが「2つの大きなボリュームゾーン」の存在です。
- 団塊世代(1947〜1949年生まれ)
- 団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)
この世代が、今後の人口構造や不動産市場にも大きな影響を与える可能性があります。
例えば、2000年時点では、
- 団塊世代 → 50代前半
- 団塊ジュニア世代 → 20代後半
でした。
それが2020年になると、
- 団塊世代 → 70代前半
- 団塊ジュニア世代 → 40代後半
へ移動しています。
さらに2035年には、
- 団塊世代 → 85歳以上
- 団塊ジュニア世代 → 60代前半
となり、
2065年には、団塊ジュニア世代も85歳以上の層に入っていく見込みです。
つまり今後の東京は、
👉 「高齢者が少しずつ増える」
というより、
👉 「大きな世代全体が高齢化していく」
という構造になります。
これは単なる人口の問題ではありません。
相続、住宅需要、介護、税収、社会保障など、さまざまな分野に影響していく可能性があります。
不動産という視点で見れば、
👉 「今後、相続物件が市場に増える可能性がある」
ということでもあります。
もちろん、エリアや物件によって状況は異なります。
ただ、長期で見れば、
- 人口減少
- 世帯減少
- 高齢化
- 相続物件増加
という流れは、東京都や特別区でも無関係ではないように感じます。
競売の現場で見た現実
私は前職で、競売業務にも携わっていました。
その中で、破産や競売に至ったケースを何件も見ています。
もちろん、
- 病気
- 離婚
- 失業
- 景気悪化
など、不運が重なったケースもありました。
ただ、それ以上に印象に残っているのは、
👉 「無理な借り入れ」
👉 「自分は大丈夫という感覚」
👉 「東京だから安心という前提」
でした。
競売になる人というと、極端な人をイメージするかもしれません。
しかし実際には、いたって普通の人たちです。
年収が極端に低いわけでもない。
高収入だから安全というわけでもない。
そこに大きな差はありませんでした。
ただ、共通点のように感じたものはあります。
それが、
👉 「自己管理の弱さ」
でした。
例えば、
- 支出管理ができていない
- 将来の変化を想定していない
- 余裕資金を持たない
- 感情で大きな買い物をする
といった特徴です。
特に多かったのが、
👉 「欲しい」という感情が先に来ているケース
でした。
本来であれば、
- 月々の返済額
- 修繕費
- 固定資産税
- 教育費
- 将来的な収入変化
などを含めて、数字で判断するべきものです。
しかし実際には、
- 「今買わないと損」
- 「みんな買っている」
- 「東京なら価値は落ちない」
- 「ローンが通ったから大丈夫」
といった感覚で進んでしまう人も少なくありませんでした。
その結果、
👉 「無理な借り入れ」
につながっていく。
個人的に違和感があるのは、「住宅ローンを頑張って通した」という表現です。
もちろん、住宅購入そのものを否定したいわけではありません。
ただ、本来、住宅ローンは“頑張るもの”ではないと思っています。
なぜなら、「頑張らないと成立しない状態」そのものが、不確実性につながるからです。
住宅ローンは、数年では終わりません。
20年、30年と続いていきます。
その間には、
- 病気
- 転職
- 金利上昇
- 子育て
- 親の介護
- 景気変動
など、さまざまな変化が起こり得ます。
だからこそ重要なのは、
👉 「今払えるか」
ではなく、
👉 「想定が外れても耐えられるか」
だと思っています。
競売の現場で見て強く感じたのは、
👉 人生は、思った以上に不確実だということ
でした。
そして、その不確実性を前提に考えられるかどうかで、長期的な安定は大きく変わるように感じています。
どこまで未来を見るのか
ここまで、人口推移や住宅供給、空き家の話をしてきましたが、結局のところ、
👉 「どこまで先を見越して判断するか」
は、人それぞれです。
例えば、
- 数年だけ保有する
- 売却前提で考える
のであれば、数十年先の人口推移は、そこまで重要ではないかもしれません。
一方で、
👉 終の棲家として考える
👉 長期保有を前提にする
👉 次世代まで保有する
のであれば、20年後、30年後の人口構造まで視野に入れる必要があります。
不動産は金額が大きいからこそ、
👉 「今どうか」
だけではなく、
👉 「将来どうなり得るか」
まで含めて考えることが重要なのだと思います。
そして個人的には、
👉 本当に怖いのは人口減少そのものではなく、
👉 「想定が外れた時に耐えられない状態」
だと思っています。
実際、不動産投資をしている人の中で、人口統計や世帯推計まで見ながら判断している人は、そこまで多くない印象があります。
もちろん、短期で見れば、今すぐ大きな問題が表面化するわけではないかもしれません。
ただ、統計というのは、“急に起こる未来”ではなく、“ゆっくり進行する変化”を示しています。
例えば、
- 2045年まであと19年
- 2065年まであと39年
です。
数字だけ見ると遠い未来のようにも感じます。
しかし、住宅ローンは20年〜35年で組まれることも珍しくありません。
そう考えると、決して無関係な未来ではないと思っています。
今は、
- 「東京だから安心」
- 「特別区だから大丈夫」
- 「人口はまだ多い」
という空気感があります。
確かに、それ自体は間違いではありません。
ただ、その一方で、
- 人口減少
- 世帯減少
- 空き家増加
- 高齢化
- 相続物件増加
といった変化も、統計上では少しずつ見え始めています。
今はまだ、そうした変化が“表面的な雰囲気”によって見えにくくなっているだけかもしれません。
しかし、長期で見れば、いずれ無視できなくなる可能性があります。
だからこそ、不動産を考えるときは、
👉 「今の空気感」
だけではなく、
👉 「長期でどう変わり得るか」
まで含めて考えておくことが重要なのだと思います。
まとめ|「買えるか」ではなく「耐えられるか」
ここまで見てきたように、
- 東京でも空き家は増えている
- 特別区でも人口構造は変化している
- 世帯数より住宅戸数の方が多い
- 高齢化や相続による供給増加も考えられる
など、不動産を取り巻く環境は、長期で見ると少しずつ変化しています。
もちろん、東京は全国の中では依然として強いエリアです。
ただ、それでも、
👉 「東京だから安心」
👉 「特別区だから大丈夫」
と単純に言い切れる時代ではなくなってきているように感じます。
特に不動産は、
- 金額が大きい
- 借入期間が長い
- 維持費が継続する
- 災害や金利変動の影響を受ける
など、不確実性の影響を受けやすい資産です。
だからこそ重要なのは、
👉 「上がるかどうか」
ではなく、
👉 「想定が外れても耐えられるか」
だと思っています。
実際、競売の現場でも見てきたのは、
👉 「絶対に失敗しないと思っていた人」
ではなく、
👉 「想定外に耐えられなかった人」
でした。
もちろん、不動産そのものを否定したいわけではありません。
条件が合えば、成立するケースもあります。
ただ、その見極めは想像以上に難しく、不確実性も大きい。
その意味で、個人的には、
👉 一つの国
👉 一つの通貨
👉 一つの不動産
に依存しすぎないインデックス投資は、一般の人にとって合理的な選択肢だと感じています。
人口と経済は密接に関係しています。
人口が減少していくエリアで資産形成を考えるよりも、
👉 人口が増え
👉 経済が成長し続ける地域や企業群
に広く分散して投資していく方が、長期では再現性が高いように感じます。
もちろん、未来を正確に予測することはできません。
だからこそ大切なのは、
👉 「絶対に上がる前提」で考えることではなく、
👉 「外れた時にどうするか」まで含めて考えること
なのだと思います。
【人口統計を用いた特別区の将来予想はこちら👇】

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