住宅購入を検討する中で、
「ペアローンなら希望の物件が買える」
「共働きだから問題ない」
と説明を受けるケースは少なくありません。
特に公務員や安定職の場合、
金融機関からは好条件でペアローンを提案されやすいのが現実です。
ただし、ペアローンは仕組みを正しく理解しないまま組むと、
将来の選択肢を大きく狭める可能性がある制度でもあります。
この記事では、
「ペアローンがなぜ危険と言われるのか」
を、できるだけ冷静に整理します。
ペアローンとは何か
ペアローンとは、
- 夫婦それぞれが別々に住宅ローンを契約
- 同じ物件に対して2本のローンを組む
- それぞれが主債務者になる
という仕組みです。
表面的には、
- 借入可能額が増える
- 希望エリア・広さの物件が選べる
- 住宅ローン控除を2人分使える
といった「メリット」が強調されがちです。
しかし、リスクは後から効いてくることが多いのが特徴です。
危険性①:どちらかが働けなくなった瞬間に成り立たなくなる
ペアローンにおける最大のリスクは、
「2人とも働き続けられること」を前提に設計されている点です。
たとえば、次のような出来事は決して珍しいものではありません。
- 病気やケガ
- メンタル不調
- 出産・育児によるキャリアの中断
- 親の介護
- 離職・転職による収入減少
これらのうち、どれか一つでも起きた時点で、2人分の返済を前提としたローン構造は一気に重荷になります。
「今は共働きだから大丈夫」という考え方は、
10年・20年という長期スパンで見ると、同じ状態が続く保証にはなりません。
特に、
- 女性側が時短勤務や非正規に切り替わる
- 夫婦間の収入バランスが大きく変わる
といった変化は、想定外ではなく“想定内”の出来事です。
さらに注意したいのが、返済の遅れに関するリスクです。
夫婦のどちらかが、気づかないうちに返済を滞らせていた場合でも、
住宅ローンは「期限の利益喪失」となり、残債の一括請求が行われます。
実際に、こうしたケースは現場でも見てきました。
一括返済ができなければ、
選択肢は事実上、
- 不動産を競売にかける
- 競売後に残債が残れば、その支払いを続ける
- 支払えない場合は、自己破産などの法的整理を検討する
という流れになります。
また、住宅ローンの借り入れ時に親族が連帯保証人になっている場合、
仮に夫婦が自己破産を選択すると、
連帯保証人に残債の返済義務が移ることになります。
支払えるかどうかは別として、
影響は夫婦だけでなく、家族全体に及ぶ可能性があるという点は、
事前にきちんと理解しておく必要があります。
ペアローンは、
「今の収入」ではなく、
「最悪の状態でも成立するかどうか」で考えるべき仕組みです。
一度組んだローンは、簡単には引き返せません。
だからこそ、楽観的な前提ではなく、
現実的なリスクを織り込んだ判断が重要だと考えています。
危険性②:離婚・別居時の処理が非常に難しい
ペアローンは、
人間関係の変化に極端に弱い仕組みです。
仮に離婚して、
- 片方が住み続ける
- もう片方が出ていく
という場合でも、
- ローンは両方に残る(住んでいなくても支払い義務はある)
- 名義・持分・返済割合の整理が非常に複雑
- 売却も簡単ではない(売却は自分の持ち分だけでもできるが、安く買われやすい)
という問題が生じます。
特に、
- 子どもの学区(簡単に転校はできない)
- 勤務地
- 実家との距離
といった事情で
「売りたくても売れない」状態になると、
身動きが取れなくなります。
危険性③:「住宅費の固定化」で人生の自由度が下がる
ペアローンは、多くの場合
「今の世帯収入をフルに使う前提」で設計されがちです。
その結果、次のような状態に陥りやすくなります。
- 住宅費が家計の大部分を占める
- 貯蓄・投資・自己投資に回す余力が減る
- 働き方やライフスタイルを変えにくくなる
これは、資産形成という視点で見ると、
かなり不利なポジションです。
特に問題なのは、
収入が高い時点の水準で住宅費が固定されてしまうことです。
住宅ローンは一度組んでしまうと、
簡単には減らせません。
一方で、
- 収入は変動する
- 働き方は変わる
- 家族構成や価値観も変わる
こうした変化は、10年・20年単位で見れば「想定外」ではなく、
むしろ想定内です。
資産形成において重要なのは、
「いくら増やせるか」よりも、
毎月いくらを自由に使えるかです。
その意味で、
固定費、とくに住宅費を抑えることは、
資産形成の土台になります。
無理のない住宅ローンを組めば、
- 余剰資金を貯蓄・投資に回せる
- 収入変動への耐性が高まる
- 働き方の選択肢を残せる
といったメリットが生まれます。
逆に、住宅費が重すぎると、
資産形成どころか、
人生そのものの選択肢が狭まってしまいます。
ペアローンを検討する場合、こういったことを理解した上で住宅ローンを組むことが重要です。
「値上がりするから大丈夫」は本当か?
よくある説明として、
「将来売ればいい」
「資産価値が上がるエリアだから」
という言葉があります。
しかし、冷静に考える必要があります。
- 実際に売らなければ利益は確定しない
- 子どもの学区・生活事情で売れないケースは多い
- 市況は外的要因に大きく左右される
住居価格の上昇は、
売却・担保活用をしない限り“心理的安心”以上の意味を持たない
というのが現実です。
公務員・安定職ほど注意が必要な理由
公務員や安定職の場合、
- 社会的信用が高い
- 金融機関が積極的に貸したがる
- 「返せる前提」で話が進みやすい
という特徴があります。
しかし、
借りられる金額≠返し続けて幸せな金額
です。
住宅費を抑えられれば、
人生の選択肢は驚くほど広がります。
ペアローンを避ける=家を買うな、ではない
誤解してほしくないのは、
- ペアローン=絶対NG
- 家を買うのは悪
という話ではありません。
大切なのは、
- どちらか一人の収入でも回る設計か
- 生活が変わっても破綻しないか
- 「住むための家」なのか「縛り」なのか
を、感情ではなく数字で判断することです。
まとめ|安定を求めて、不安定にならない選択を
ペアローンは、
- 短期的には魅力的
- 長期的にはリスクが顕在化しやすい
という性質を持っています。
特に、
- 安定を求めている人
- キャリアの自由度を残したい人
- 資産形成を長期で考えている人
ほど、慎重になる価値があります。
住宅は人生の土台です。
その土台が重すぎると、
上に何も積み上げられなくなります。
「今買えるか」ではなく、
「10年後も選択肢が残るか」
この視点を、
判断軸として持っておくことをおすすめします。
※住宅ローン・税制・金融制度は変更される可能性があります。
※具体的な判断は、金融機関・専門家・公式情報を必ずご確認ください。※住居に関する考え方はそれぞれです。私が前職を通して、不動産業を経験し、資格や実務で学んだことを基に書いております。こういった内容もあるという程度にお考え下さい。
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