住居が値上がりしても意味はあるのか?──「資産価値」と「使える価値」は別物

近年、不動産価格の上昇が話題になることが増えました。
「マンション価格は右肩上がり」「都心の不動産は資産になる」
そんな言葉を、ニュースやSNSで目にしたことがある人も多いと思います。

では、ここで一つ冷静に考えてみたいことがあります。

自分が実際に住んでいる家の価格が上がったとして、それは本当に“意味のある資産価値”なのでしょうか。

結論から言うと、
売却や借り入れをしない限り、一般の居住者にとって直接的な恩恵はほとんどありません。

不動産価格の上昇と、生活の安定・自由度は、必ずしもイコールではないからです。


目次

値上がり=お金が増えた、ではない

まず大前提として、不動産の価格が上がるというのは、

  • 市場での評価額が変わった
  • 将来売却した場合の“可能性”が変わった

という話に過ぎません。

たとえば、自宅の査定価格が
「5,000万円 → 6,000万円」
に上がったとします。

しかし、

  • 売却しない
  • 担保にして借り入れをしない

このどちらもしないのであれば、
銀行口座の残高が増えることはありません。

日々の生活費が楽になるわけでも、
将来の可処分所得が増えるわけでもない。

これは、不動産価格の上昇が
「評価上の数字の変化」にとどまっているからです。

株式や投資信託のように、
一部を売却して現金化する、といった柔軟な使い方ができない点も、
自宅不動産の大きな特徴です。


「市場価格 > 借入残高」は確かに安心材料ではある

もちろん、住宅ローンを組んでいる場合、

  • 市場価格 > 借入残高

いわゆるアンダーローン状態であることは、心理的な安心材料になります。

  • 売却すればローンを完済できる
  • 最悪のケースでも選択肢が残っている

こうした意味では、決して無意味ではありません。

ただし、ここで重要なのは、
これはあくまで「理論上・心理上のメリット」にとどまるという点です。

毎月の返済額が減るわけでもなく、
家計の余裕が増えるわけでもない。

「安心感」と「使えるお金」は別物だ、という認識は持っておいた方が良いでしょう。


売れない家は、本当に「資産」と言えるのか

次に、もう少し現実的なケースを考えてみます。

  • タワーマンションに住んでいる
  • 子どもの学区の関係で引っ越せない
  • 仕事や家族の事情で当面売却できない

このような状況では、
不動産価格がどれだけ上がっていても、その価値を現金化することはできません。

「将来、高く売れるかもしれない」という期待はありますが、

  • 家族構成
  • 子どもの成長
  • 勤務地や通勤条件

といった要素は、
売却のタイミングや自由度を大きく制限します。

つまり、
住み続ける前提の住宅は、流動性が極めて低い資産なのです。

これは、数字上の評価額だけを見ていると見落としがちなポイントです。


外的要因は、個人ではコントロールできない

不動産価格は、個人の努力とは無関係な要因に大きく左右されます。

  • 金利の上昇・低下
  • 景気の変動
  • 人口動態
  • 税制改正
  • 災害・社会情勢

今は「高く見える」価格も、
数年後にどうなっているかは、誰にも分かりません。

さらに、

  • 売りたいときに必ず売れるとは限らない
  • 想定した価格で売れるとは限らない

というのが、不動産の現実です。

特に自宅の場合、
「今は高い」という理由だけで行動を変えることが難しい分、
外部環境の変化に対する耐性は低くなりがちです。


自宅は「投資対象」より「生活インフラ」として考える

これまでの点を踏まえると、
自宅については、

  • 資産として増やす対象
  • 投資で積極的にリターンを狙うもの

として過度な期待を持たない方が、精神的にも現実的にも健全だと感じています。

自宅の役割は本来、

  • 日々の生活を安定させる拠点
  • 家族や自分の時間を守る基盤
  • 長期的な安心を確保するためのインフラ

この位置づけに近いものだからです。

「住むための家」と
「増やすための資産」は、
そもそも目的も性質もまったく異なります。

ここを混同してしまうと、

  • 評価額は上がっているのに、不安が消えない
  • 住宅ローンや住み替え制限によって、行動の自由度が下がる

といった矛盾を抱えやすくなります。

投資として考えるなら、前提条件が変わる

もちろん、住宅を投資的に扱う選択肢がすべて否定されるわけではありません

たとえば、

  • 賃貸併用住宅として一部を収益化する
  • 定期的に住み替え、前の住居を賃貸・売却する
  • 立地や出口戦略を明確にしたうえで購入する

といった場合は、「住居」と「投資」を意識的に切り分ける必要があります。

ただし、
どこまで住宅にリスクを取るかは、人によって大きく異なります。

  • 賃貸だから正解
  • 持ち家は必ず負債

といった単純な話ではありません。

正解は一つではない

ここで書いている内容は、
前職での不動産実務の経験や、資格学習を通じて整理してきた一つの考え方にすぎません。

住宅に対する価値観は、

  • 家族構成
  • 収入の安定性
  • 働き方
  • 人生で何を優先したいか

によって大きく変わります。

だからこそ、
「こうした考え方もある」程度の選択肢として捉えてもらえれば十分だと思っています。

自宅は、
お金を増やすための道具ではなく、
生活を安定させるための土台

この視点を持っておくだけでも、
住宅に振り回されにくい判断ができるようになるはずです。


まとめ:値上がりしても「使えなければ意味は限定的」

整理すると、ポイントは以下の通りです。

  • 自宅価格が上がっても、売却・借り入れをしなければ現金は増えない
  • 市場価格が借入残高を上回ることは心理的安心材料にはなる
  • 学区や家族事情で売れない家は、流動性の低い資産
  • 不動産価格は外的要因に大きく左右され、将来は不確定
  • 自宅は「投資」ではなく「生活インフラ」として考えた方が現実的

不動産価格の上昇を過信せず、
「住むための家」と「増やすための資産」を切り分けて考えること。

この視点を持っておくことが、
資産形成において遠回りしないための、大切な考え方だと思います。



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この記事を書いた人

現役公務員として働きながら、資産形成やキャリア形成について発信中。30代で職業訓練校を経て公務員へ転職した実体験から、「遅く始めても人生は変えられる」をテーマに、勉強法やお金の知識、安定した収入を活かした堅実な資産づくりをわかりやすく紹介しています。

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