最近、「FIRE(早期リタイア)」という言葉をよく見かけます。
SNSでは、
• 投資で資産が倍になった
• 〇年で会社を辞めた
• もう働かなくていい
といった話が目立ちます。
ただ、ここで一度立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
安定を求めて投資を始めたはずなのに、
なぜわざわざ“不安定な状態”に近づいていくのか?
私は、この点にずっと違和感を持っています。
投資で「未来が確定する」ことはない
投資で
「これをしたら、将来こうなる」
という確定ルートは存在しません。
インデックス投資がよく勧められるのは事実です。
過去の統計データを見れば、
長期・分散・積立で一定の成果が出てきた可能性が高い。
ただし、それはあくまで
「過去のデータ上、そうだったということであり、未来も確実に上昇するとは限らない」
「そうなる可能性が高い」
という話です。
- 未来も同じリターンが出る保証はない
- 経済環境・制度・人口構造は変わり続ける
- 誰も未来を予測できない
これは冷静に見れば、当たり前のことです。
短期的な成功体験は、人を過信させる
投資で一時的にうまくいくと、
人はどうしても気が大きくなります。
- 含み益が出た
- 資産が短期間で増えた
- 周囲より早く結果が出た
これは人間の心理として自然な反応です。
ただ、その状態で
- 再現性があるように語る
- 他人を煽る
- 「やらない人は情弱」と言う
こうした発信をするのは、
正直かなり無責任だと感じています。
短期の成功が、長期の成功を保証することはありません。
短期的な成功により、自分は投資の才能があると思い込んでしまうのは無理もないかもしれません。
ですが、そういった時こそ、一歩引いて、自分を客観的に見つめることが大切です。
統計には「平均への回帰」がある
投資の話で、あまり語られない重要な概念があります。
それが、平均への回帰です。
- 一時的にリターンが良かったとしても
- 長期でならすと、平均的な水準に戻っていく
これは統計の基本的な考え方です。
つまり、
- 「今年はよかった」
- 「数年うまくいった」
からといって、
それが未来永劫続くわけではないということ。
だからこそ、
短期的な成果を前提に人生設計を固定してしまうのは、
リスクが大きいと私は思います。
日本円を稼いで、資産形成をする以上、為替リスクが伴う
日本円で収入を得て資産形成を行う以上、
為替の影響から完全に自由になることはできません。
これは、NISAでの投資であっても、不動産投資であっても同様です。
たとえば海外資産に投資すれば為替変動の影響を受けますし、
国内不動産であっても、金利や景気、間接的な為替環境の影響を受ける可能性があります。
また円だけを保有していれば、為替リスクも知らず知らずに負っています。
つまり、どの資産を選んだとしても、
為替という不確実性がゼロになることはないという前提に立つ必要があります。
だからこそ大切なのは、
不確定要素を「完全になくす」ことではなく、
できるだけ増やしすぎないことです。
リスクを理解したうえで、
- 収入源を安定させる
- 過度なレバレッジをかけない
- 判断を複雑にしすぎない
こうした選択を積み重ねることで、
資産形成はより現実的で、続けやすいものになります。
不確実な要素が多い時代だからこそ、
シンプルで管理しやすい形を選ぶことが、
結果的にリスクを抑える一つの考え方だと思います。
資産額を公表しない方がいい理由|資産形成で静かに守るべき視点
資産形成において、
「いくら資産を持っているかを公にすること」には、ほとんどメリットはありません。
SNSで資産額を公開したり、増えたことを誇示したりしても、
実生活が良くなるわけではなく、むしろトラブルの種になる可能性の方が高いからです。
実際、資産額を発信している人を見かけた場合、
- 集客や商品販売など、何らかの目的がある
- 数字自体が誇張されている、もしくは事実ではない
- 本当だったとしても、他人にとって再現性はない
こうしたケースがほとんどです。
たとえ本当の数字だったとしても、他人の資産額を知ったところで、自分の資産形成が直接うまくいくわけではありません。
また、資産形成では「下振れ」を想定しておく視点も重要です。
たとえば外貨建て資産や海外株式の場合、
- 為替の変動
- 資産価格そのものの下落
この2つが同時に起きると、
想定以上に評価額が下がることがあります。
「長期だから大丈夫」「過去は上がってきた」という前提だけで考えていると、
実際に下落局面に直面したとき、精神的に耐えられなくなる人も少なくありません。
だからこそ、
- 他人の数字に振り回されない
- 公表する必要のない情報は出さない
- 最悪のケースを想定したうえで設計する
この姿勢が、資産形成を長く続けるうえでは大切だと思います。
資産形成は競争ではありません。
静かに、淡々と、自分の生活とリスク許容度に合った形で続けていくことが、結果的に一番安定します。
本業の収入源は「安心の土台」になる
ここで強調したいのは、
投資を否定しているわけではない
という点です。
私自身、投資は有効な手段の一つだと考えています。
ただし、
本業の収入源を手放してまで依存する必要はない
とも思っています。
- 毎月入ってくる給与
- 社会保険・年金
- 信用力
これらは、
投資のリターンとは別軸で、
人生の不確実性を下げてくれます。
ある程度、
投資と距離を保てる状態でいること。
それが、精神的にもかなり楽です。
安定を捨ててまで、FIREを目指す必要はあるのか
ここで、問いを投げかけたいと思います。
- なぜ安定を求めて投資を始めたのか
- 何から自由になりたかったのか
- 本当に「働かないこと」が目的なのか
もし、
- 生活が安定している
- 仕事に大きな不満がない
- 社会とのつながりがある
この状態があるなら、
無理にFIREを目指す必要はないのではないでしょうか。
社会とのつながりは、人生の質を支える
もう一つ、大切な視点があります。
それは、社会との関係性です。
仕事は確かに大変な面もありますが、
- 人との関わり
- 役割を持つこと
- 誰かの役に立つ実感
こうしたものは、
人生の満足度に大きく影響します。
「完全に切り離す」よりも、
緩やかにつながっている状態の方が、
長期的には楽しいのではないか。
私はそう感じています。
安定を軸に、投資と付き合えばいい
FIREを目指すかどうかは、
あくまで個人の選択です。
ただ、
- 不確実性を高めてまで目指す必要はない
- 投資に人生を委ねる必要もない
- 本業+投資という形でも十分に自由度は上がる
この視点は、
もっと共有されてもいいと思っています。
未来は誰にも分かりません。
だからこそ、
- 安定した土台を持ちながら
- 投資は「可能性を広げる手段」として使う
そのくらいの距離感が、
現実的で、長く続けられる資産形成ではないでしょうか。
長寿化とFIREの相性
長寿化という、もうひとつの見落とされがちな前提
FIRE(早期リタイア)を考えるとき、意外と見落とされがちなのが「寿命の変化」です。
『LIFE SHIFT』などでも指摘されているように、人の寿命は長期的に伸び続けています。
年間に換算すると、平均寿命は1年で数か月ずつ延びているとも言われています。
実際、2000年代後半生まれの世代については、「平均寿命が100歳を超える」という推計もあります。
数値の正確さは将来まで確定しているわけではありませんが、少なくとも、
「老後はせいぜい20〜30年」
という前提が、もはや成り立たなくなりつつあることだけは確かです。
もし仮に、90歳や100歳まで生きるのが当たり前になるとすると、
30代や40代で完全リタイアすることは、
40〜60年以上、働かない人生
を意味します。
これは、過去のどの世代にもなかった長さです。
長寿化×FIREが持つ構造的なリスク
この前提に立つと、FIREにはいくつかの現実的なリスクが浮かび上がります。
① 社会保障をすべて自分で背負う期間が長くなる
会社員であれば、
- 健康保険
- 厚生年金
- 傷病手当
- 失業保険
などの仕組みに支えられています。
しかし、FIRE後は、これらを基本的に自分で賄う必要があります。
短期間なら耐えられても、これが40年、50年と続くと、想像以上の負担になります。
② インフレと「定額の資産取り崩し」の相性の悪さ
FIREの多くは、
- 資産運用
- 配当
- 取り崩し
を前提に設計されます。
しかし、長寿化とインフレが重なると、
「将来の生活費がどれくらいになるか」
を正確に見積もることが、ほぼ不可能になります。
今の100万円と、30年後の100万円の価値は同じではありません。
「十分な資産だと思っていたものが、後になって足りなくなる」リスクは常に残ります。
③ 何もしない期間が長くなることの心理的な負荷
FIREの議論では、経済面が注目されがちですが、
実際には「時間の使い方」のほうが難しいこともあります。
数年なら問題なくても、
10年、20年と何も生産的な活動をしない状態が続くと、
- 役割がなくなる
- 社会との接点が減る
- 自分の価値を実感しにくくなる
といった喪失感を抱える人も少なくありません。
これは個人差が大きいですが、「経済的に自由=精神的に満たされる」とは限らないのが現実です。
④ キャリアを完全に止めるリスク
長寿化の時代では、人生はむしろ「マラソン」に近づいています。
途中で完全にキャリアを中断してしまうと、
あとで「やっぱり少し働きたい」と思ったときに、
- スキルが古い
- 市場との接点がない
- 再参入が難しい
という状態になりやすい。
FIREは「戻らない前提」で設計されている点が、構造的な弱さでもあります。
FIREは「できる人が悪い」のではなく、「前提が厳しくなっている」
ここで大切なのは、FIREそのものを否定したいわけではない、ということです。
FIREを実現して、満足している人も確かにいます。
ただ、長寿化・インフレ・社会保障の変化を踏まえると、
FIREは、以前よりもはるかに難易度が高い戦略になっている
というのが、構造的な現実です。
100歳まで生きるかどうかは誰にも分かりませんし、
何歳まで働くのが正解かも人それぞれです。
だからこそ、
「完全に働かない」という前提に人生を賭けること
自体が、以前よりもリスクの高い選択になっている――
その点は、冷静に考えておく価値があると思います。
FIREより「選択的に働ける状態」のほうが現実的な理由
FIREの魅力は、とても分かりやすいものです。
「もうお金のために働かなくていい」
「時間を完全に自分のものにできる」
この自由は、誰にとっても強く惹かれるものがあります。
ただ、長寿化・インフレ・社会制度の変化を踏まえると、
現実的な戦略としては、
完全に働かない状態
よりも
働くかどうかを選べる状態
を目指す方が、はるかに安定的だと感じます。
① 「収入ゼロ」と「収入を選べる」は、リスクの大きさが違う
FIREは、基本的にこういう状態です。
- 生活費は資産から出す
- 収入は運用や配当が中心
- 労働収入はない前提
一方、「選択的に働ける状態」は違います。
- 生活費の一部は資産でカバー
- 足りない分や不安な分は働いて補える
- 働く量・内容を自分で決められる
この違いはとても大きい。
資産運用は、どれだけ慎重にやっても「ブレ」があります。
インフレ・相場変動・制度変更の影響も受けます。
そんな中で「収入が完全にゼロ」だと、
資産の揺れがそのまま生活不安に直結します。
一方で、「少し働けば補える」という状態があれば、
資産運用の不確実性をかなり吸収できます。
② 人生が長くなるほど、「完全リタイア」は重くなる
もし人生が90年、100年に近づいていくなら、
30代や40代で完全リタイアするというのは、
残り50年以上を「資産だけで生きる」選択になります。
これは、過去のどの世代にもなかった前提です。
一方で、「働くことをやめない」のではなく、
「必要な分だけ働く」「選んで働く」なら、
- 気力がある時は多めに
- 疲れたら少なめに
- 興味がある分野だけ
という調整ができます。
長い人生では、こちらのほうが自然です。
③ 働ける状態そのものが「最大の保険」になる
多くの人は、「働かなくていい状態」をゴールにしがちですが、
本当の意味での安心は、
「いつでも働ける状態であること」
のほうにあります。
・スキルがある
・市場で必要とされる
・頼まれたら仕事ができる
この状態にいれば、
- 資産が減っても
- 生活費が上がっても
- 想定外の出費があっても
リカバリーできます。
FIREは「資産に依存した人生」ですが、
選択的に働ける状態は「自分自身に依存した人生」です。
どちらが長期的に安定するかは、考えてみると分かりやすいと思います。
④ 心理的にも「何もしなくていい」より「選べる」のほうが楽
FIREを目指す人の多くは、
「働きたくない」のではなく、
「嫌な働き方をしたくない」
「消耗する仕事を続けたくない」
という気持ちが強いはずです。
その願いは、「完全リタイア」以外でも叶えられます。
- 週2だけ働く
- 好きな仕事だけする
- 責任の重い仕事は断る
- お金にならない活動に時間を使う
こうした自由は、「選択的に働ける状態」でも十分に実現できます。
むしろ、収入がゼロの状態より、
少しでも自分で稼げる方が、精神的には安定します。
まとめ:ゴールは「働かない」ではなく「縛られない」
FIREが悪いわけではありません。
合う人もいます。
ただ、長寿化と不確実性の時代においては、
「完全に働かない」よりも
「働くかどうかを自分で決められる」
この状態のほうが、現実的で、持続可能です。
資産 × スキル × 選択肢
この3つを持っている人は、人生の不確実性にとても強くなります。
FIREよりも、
“選択的に働ける状態”こそが、現代版の経済的自由
なのかもしれません。
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